梅雨が明けましたね。今年は暑くなるそうですねぇ。YAWP! backpackersでは、相変わらず2階のリビングルームにはエアコンがありません(サーキュレータが山ほどあります)が、3階のベッドルームはもう、「エアコン使いまくりでいいや」と開き直りましたので、ここのところはずっと、電源つけっぱなし状態です。
さてさてこのブログ、先月に全然更新しなかった分、今月はそれなりに書こうと思っているのですが、今回は久しぶりに、ホステル・ゲウトハウス業界、全体の近況、展望分析をしようと思います。
ここ最近のゲストハウス業界は、一言でいうと「下り坂」です。いっそのこと「氷河期」と書いてしまおうかと思いましたが、まだ底には達しておらず、今はその途中という感じなので、ここでは「下り坂」と表現させていただきます。
はっきり言いまして、昨年より稼働率が上がった、という宿は、都内には皆無だと思われます。たとえ上がったところがあったとしても、それは値段を下げまくった結果、というケースが多いでしょうし、少なくとも、昨年より利益が増した、というところはまずないはずです。
昨年11月の記事で僕は、2015年の都内新規オープン簡易宿数は20軒ほど、既存と合わせれば計70軒ほど、と書きました。そして今年の上半期は、僕の知る限りでは8軒の、新しい簡易宿がオープンしました。
というわけで、今年は最終的には15軒ほどがオープンすると予想します。それも含めての、ここ数年の都内にある簡易宿数の増加動向をまとめると、
〜2013年末まで 35軒
2014年 +15軒
2015年 +20軒
2016年 +15軒
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2016年末予想 計85軒
となります(正確な数字ではなく、僕の調査歴を元にした、だいたいの数字です)。
つまり、2013年までは35軒しかなかったこのマーケットが、たった三年の間に、50軒も増えた(増えるであろう)状態だということです。しかも、この三年の間にできた宿の多くは、大企業がスポンサーにつき、ベッド数が100を越えるような、巨大なものばかり。カオサングループさんやケイズハウスさんのようなゲストハウスカンパニーが、過去に展開して来たような、小〜中規模ホステルは、実はそんなに増えていないのです。
要は、宿の軒数だけを見るとこの三年で2.5倍程度なのですが、ベッド数で言うと、おそらく4倍くらいには増えているのです。たったの三年で、マーケットの供給量が4倍に膨れ上がっているということなのです。
その一方で、需要の方はというと、
【訪日観光客数】
2012年: 836万
2015年:1974万
と、たしかに、この三年で2倍以上に増えました(といっても、実は2014年に政府が統計方法を変えたことによる水増し分が含まれているため、2〜300万はフェイクなんですけどね)。しかし、ホステル・ゲストハウス業界のベッド数は、前述のように4倍に増えています。
2012年〜2013年の時点では、都内の簡易宿はまだまだ足らず、世界中のバックパッカーが「どこもフルで泊まれない!」と嘆いていました。僕も海外の友人たちから、「なんで東京ってあんなに泊まるところが少ないの?」と何度か言われました。
2014年〜2015年前半は、需要と供給のバランスは、それなりに合っていたと思います。海外から来るバックパッカーが、泊まる宿がなくて困るようなこともなく、宿としても、高い稼働率を維持できていた。双方にとって、とてもいい時代だった。
・・・しかし、昨年の後半頃からのこの業界は、もはや
明らかな供給過多状態です!!
需要の増加ペースをはるかに上回る勢いで、供給が増え過ぎているのです! 今や、よほどの人気宿でない限りは、ハイシーズンでもベッドが埋まらない日がたくさんあります。 とある、この業界に精通している方は、「この一年で、稼働率の平均は全体的に10〜20%落ちている」と分析しています。全くもって、その通りだと思います。
ズバリ言います! ヤバいです!! 今はこの業界のオーナーさん、マネージャーさんたちはみんなカツカツで、ギリギリの状態で宿を経営しています。
こんなことを書くと、「あぁ、アンタんとこも経営難か」と思われるかもしれません。実は僕は、昨年と単純比較で分析するために、ある実験を試みています。いろいろあって、予定が少々狂いましたが(笑)。
YAWP! は昨年の7月9日に、ブッキングサイト“Hostelworld”で、予約の受付が始まりました。そして今年は、6月半ばから一ヵ月の夏休みをいただいたのですが、実はその間はあらゆる予約をストップしていまして、昨年と同じ日、7月9日に予約受付を再スタートをしようと試みました(システム上の問題が発生し、結局7月12日に遅れちゃいました)。
その結果・・・
正確な数字ではなく、記憶を元に、なのですが、昨年は予約受付を開始した7月9日から15日までの一週間で、50件ほどの予約をいただきました。一方で今年は、予約受付を再開した12日から本日までの一週間で、およそ40件です。
50件から、40件へ。人数で言うと、およそー20人。泊数ならば、ー60泊。というわけで、昨年よりも、明らかに予約のペースが落ちました。というか、それは当たり前です。この一年で、僕にとっては競合宿が一気に増え、ゲストにとっては選択肢が一気に増えているのです。需要よりも供給が増えまくったのに、ウチの予約や利益が増える、そんな夢のような状況を生み出せるほど、僕は経営努力をしておりません(笑)。昨年からは、ウチは改善も改悪も特になく、広報・周知活動も全くしないままで、基本的には何も変わっておりません。
というわけで、「稼働率が業界全体で落ちている」を、実際にヒリヒリと感じている、今の僕はそんな状況なのです。
昨年11月頃のある日、僕がHostelworldでの他宿のレビュー&価格の調査をした(たまにやります)ところ、2000円以下に設定しているところが、いきなりたくさんあって驚きました。その一方で、年末年始には、5000円以上に設定しているところがたくさんあり、その極端な振れ幅に僕はなんだか、残念な気持ちになりました。
そして、この夏。もちろんハイシーズンなわけですが、改めて調べてみると、業界全体で価格は例年よりも抑え気味です。昨年までは、“ハイシーズンならばどこも売り切れなので、高く設定しても売れる”、売り手市場だったのが、この夏は“ハイシーズンでもベッドは余っているので、宿を選べる”、買い手市場になっている印象です。要は昨年までは、宿は
ローシーズンに儲からない分、ハイシーズンに高値で売って儲けを確保
できていたのが、今年は
ハイシーズンでも高値にすると売れない、
そんな八方ふさがりな状態だと思われるわけです。
今後もこの先2〜3年はおそらく、都内にホステル・ゲストハウスは増え続けます。すでに供給過多だというのに、さらに拍車がかかります。その結果、多くの宿がハイシーズンでも全く儲からず、経営破綻状態に陥り、ヘタしたら一年で黒字の月が一つもない、なんてこともありえます。もちろんそんな宿は、とにかくギリギリまでねばろうと、値下げをしまくります。日本は資本主義、市場経済なので、こういった競争と淘汰は、当然のことだとも言えますが。しかしこのままでは、業界全体が疲弊し、ほとんどが沈む可能性すらあります。
さらにはイギリスのEUからの独立が決定し、円が多く買われ、一気に円高傾向になりました。にもかかわらず物価は変わっていないので、これは訪日観光客にとっては大ダメージ。よって今後はこの業界、需要は増加どころか、減少する可能性すら大いにある。ヤバいですよ。本当にヤバい状況です。
大企業がスポンサーにつく会社経営の宿は、地力があるわけで、赤字でもしばらくはやり続けるでしょう。しかし地力のない、小さな宿、個人経営の宿は、今後はどんどん淘汰されて行くでしょう。ウチは持ちビルで、オペレーション設定には余裕がある(稼働が50%でもOK)ので、しばらくは大丈夫です。だから、一ヵ月の夏休みをとったりもできます。しかし、賃貸でやっていて、稼働が60〜70%ないと利益にならないようなところなんかは、今後はかなり厳しいのでは、と思われます。
「ゲストハウスを開きたい!」という夢を持っている人は、まずはこの現状を知るべきです。そして、事業計画を作る際には、稼働率予測はせいぜい60%にして、価格は2500円程度にして、それで利益が生まれるオペレーションを組めないようなら、諦めるべきです。たしかに2013年の時点では、都内の宿の稼働率は80%を越えるのが普通でした。2015年には、70%に予測設定しても実現の可能性が大いにありました(実際に、それぐらいの平均値でした)。しかし2017年は、うまく行っても、せいぜい60%です。利益の面で、このビジネスが上昇していたのは、すでに過去の話です。今は明らかに、下降中なのです。
「今、宿が不足している」なんてのは、もはや、ただの都市伝説。その行き過ぎた誤解により、業界全体が、今はとんでもないことになっています。苦しんでいる人が、たくさんいます。
おそらく、ここ数年の間にこの業界に参入した者の多くは、「こんなはずじゃなかった!」と、頭を抱えています。
「今は、宿不足」を全く疑わない、素直すぎる日本の大多数の方々。
「このビジネスは儲かるはずだ!」と勘違いし、流れを全く読めずに参入してしまう、愚かな大企業の方々。
この業界の、この現実を、はやく知って下さい!!
「このビジネスは儲かるはずだ!」と勘違いし、流れを全く読めずに参入してしまう、愚かな大企業の方々。
この業界の、この現実を、はやく知って下さい!!
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