2017年8月15日火曜日

ありがとう、向井さん!!



先月末、ジャパンバックパッカーズリンク代表の、向井通浩さんが、亡くなったそうです。


「亡くなりました」ではなく「亡くなったそうです」にしたのは、関係のある方から直接伺ったわけではなく、人づての伝聞の情報だからです。そして僕に、“まだ、信じられない”という思いが強くあるせいもあります。先月の後半まで、いつもと変わらずに、楽しく有益な情報をfacebookやtwitterにあげまくってくれていましたので。逆に言うと、とある日からプッツリとそれらの更新が途絶え、僕は「どうしたのかな?」と心配していたのですが。まさか、お亡くなりになったとは。本当に、急で驚きました。


向井さんは、一般的にはどれだけ知られているのかわかりませんが、このホステル(ゲストハウス)業界では、知らない者がいないくらいの有名な方です。元々は世界を旅するバックパッカーで、日本でも安宿の文化を普及させたいと、世間への発信を続けておりました。ジャーナリストとして、雑誌やTVからの取材の依頼も多く、仮にTV番組“マツコの知らない世界”でゲストハウスが特集に組まれたとしたら、ナビゲーターとして呼ばれるであろう、いや、呼ばれるべき方です。


彼はとにかく、この業界に関して、圧倒的に詳しいのです。業界全体の把握や分析に長けているのはもちろん、個々の宿々の経営状況やオペレーション設計まで知っているような方なのです。実は、僕が知ったように書いている、いろいろな情報や分析の、発信源の多くは向井さんです。このブログは、【※ソースは向井さん】だらけだったわけです。



向井さんは、新たにオープンした宿も、くまなくチェックしています。工事中どころか、着工前、なんなら計画が立ち上がった時点でもう、情報をつかんでいたりします。なので彼と僕との関係も、僕がYAWP!をオープンし、彼がウチに来てくれた、という出会い方です。


二年前のとある日の夕方頃、YAWP!にひょっこりと現れた向井さん(事前に連絡はいただいていました)。その第一声に、「素晴らしい。これぞまさにバックパッカー宿ですね〜」と言っていただけたのは、僕は今でも忘れられません。向井さんのことは、僕は以前から知っていましたので、僕なりにそれなりに緊張していたのです(僕が人と会うことに緊張するのは、極めて稀です)。しかし、挨拶よりも先にそんなありがたいコメントをいただき、僕はホッと胸を撫で下ろしたわけです。そして彼とはそれから2時間ほど、いろいろな話をして盛り上がりました。その後も、年に二回程度ですがお会いすることができ、一緒に飲んだりもしました。



ゲストハウス・ジャーナリストとされる方は、向井さんの他にも、何人かいらっしゃいます。しかし僕は、向井さん以外の方とは、現状で繋がってはいません。それは単純に、向井さん以外の方にウチに来ていただいたことがないせいもありますが、それよりも僕は、向井さんの、ジャーナリストとしての姿勢を尊敬しているからです。



向井さんは、新規オープンの宿のオープニングパーティー(たいていが巨大な宿です)に呼ばれることが多いようですが、何と言いますか、いわゆる“提灯記事”を全く書かないのです。どんなに接待を受けまくろうが、魅力を感じない宿のことは、絶対に褒めない。推薦しない。むしろ、なんならば、クソミソのケチョンケチョンに酷評します。「ゲストハウスは素晴らしいよ!」「ここ、おすすめ! ここも、おすすめ!!」を発信するばかりの、博愛でヌルいジャーナリストではないのです。なので、敵もたくさんいたと思います。

これは向井さんが、本当にホステル&ゲストハウスを愛していたからだと思います。なので、嫌われるのを分かった上で、この業界の玉石混交の“石”を、積極的にやっつけようとしてくれたわけです。これは、僕も同じ考えです。昨今のホステルの爆発的増加傾向を止めたいのではなく、“つまらない宿”がこれ以上増えて欲しくないのです。



さらには僕が向井さんに共感する部分として、「“ゲストハウス開業セミナー”は許せない」がありました。向井さん以外のゲストハウスジャーナリストの方は、こういった胡散臭いセミナーに関わっているケースが多いです。「ゲストハウス経営はこんなに楽しい」「あなたもやってみませんか?」を拡散し、誰にでもいい顔をし、無責任にナカマを増やそうとする。もちろん、有料で。向井さんの元にも、アドバイスを求める開業志望の者が多く訪れたようですが、彼はお金はとらず、業界のリアルな現状をちゃんと伝えてくれていました。


向井さんは、ゲストハウスの経営というものが、いかに儲からないか、いかにキツい仕事か、そういったマイナスの面も発信し続けてくれていた、とても貴重な存在だったのです。急激な飽和の兆候、昨今のすさまじい開業ブームに対しても、危険性を訴え続けてくれていました。少し前にこのブログに、僕は「2014年の時点で、この業界の未来への警鐘を鳴らす方がいた」と書きましたが、これはまさに、向井さんのことです。


要は、向井さんというのは、「日本のホステル・ゲストハウス業界の苦しい現状を包み隠さず訴え」「その上で優れた経営センスのある方や、本当にバックパッカーマインドのある方の参入を期待し」「素晴らしい宿々が揃い、業界全体の魅力が増し、この文化が世間一般に普及することを夢見る」そんな素晴らしいジャーナリストだったのです。



というわけで今回、向井さんを失ったというのは、このホステル・ゲストハウス業界にとっては、すさまじいダメージなのです。本当に、残念です。



向井さんは、亡くなる直前に、経営難による廃業を決意したゲストハウス経営者に対して、その決断を尊重し今後の人生を応援する、とても温かいメッセージを贈っていました。


向井さんは、そんな、優しい方でした。これからも、前途多難なこのホステル・ゲストハウス業界を、天国から見守っていただけると思います。


僕とは二年という、短い間でしたが、本当にありがとうございました!!


昨年の業界人飲み会で。左奥が向井さんです。





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