2020年5月9日土曜日

「恩で買って」は愚。「価値と信頼を売る」のが賢。





始めに言っておきますが、今回の記事は二アリーイコールで、小日本のY教授への決別宣言です。僕から決別をするというよりも、彼がゲストハウス業界から出て行く判断をしたわけですけどね。別に彼のフェードアウト宣言を待っていたわけではないのですが。「サヨナラの挨拶代わりに、言いたい放題に言わせてもらうぜよ!」というのはあります。



はるか昔、僕が学習塾で働いていた頃、なぜかそれなりの頻度で珍客が来ていました。ヘッドに光るおもちゃがついたボールペンなどの、くだらないけれど値は張る商品を売りに来る、スーツ姿の若者たち。おそらく、いや間違いなくあれは、どこかの会社が営業活動のトレーニングとして、新入社員にやらせているのです。ライオンが子を谷底に落す感じで。普通にやっても絶対に売れない物を売り廻らせて、恥をかかせまくって、スキルというよりもメンタルを鍛えるのでしょうね。

こういう商品(例)

あのムチャ営業、今もやっているのかは知りませんし、今であればブラック企業のパワハラに認定されるでしょうが(笑)。当時のとある日に、この同じ商品を売りに、三人の若者が別々に来たんですよ。そして、営業の方法が三者三様で、おもしろかったのです。古い話なのでうろ覚えですが、

一人目は、
「これを誰かに買ってもらうまで、会社に戻れないんですぅ。助けて下さいぃ」
→僕「悪いね、他を当たって」

二人目は、
「このペンを使うと、モテモテになります。商売繁盛します。運気が上がりまくりますよ」
→僕「おもしろいけど、ちょっと弱い。もっとブッ飛んだ方がいいかも。隕石が降って来て人類が滅亡しても、あなただけは必ず助かります、とか。17年後に価値が爆上がりして、1億円で売れます、とか」

三人目は、
「このペンが1000円なのは、率直に言って割高だと思います。なので、僕が何かお仕事を手伝います。皿洗いでも草むしりでも」
→僕「おっ、その心意気はいいね。君、伸びるよ。この営業回り、けっこう買ってもらえたんじゃない?」
→彼「はい。買ってくれた上に、手伝いはしなくていい、というパターンが多かったです」

こんな感じで。


僕は結局、誰からも買いませんでしたが、仮に誰かから買わなければいけない決まりがあるとすれば、確実に三人目を選びます。彼はちゃんと、“価値”を売っている。会社から「値引きは禁止」と言われているのでしょうから、ならば違う形で価値を付随させようという、バランス感覚がある。

二人目も、工夫をしようという気概は良し。バカバカしい戦略で行くというのも良し。しかし中途半端なので、どうせブラフのコメディ路線で行くのならば振り切れ!と、アホなアドバイスをしたわけです。

一人目が、最悪です。何にも考えていない上に、一番、楽な手段を選んでいる。ナチュラルに会社を悪者にもしている(そりゃあこんな無理難題を押し付けられて、ムカついているのでしょうけど)。確実に営業職にはむいていないし、どうせすぐに辞めるでしょう。



ここで話は変わり、前回の最後に書いた、キングコング西野氏を嫌いになった、という話題。僕は彼の「今は恩を売るチャンス」という啓蒙に吐き気がしたわけですが、その話をもう少し具体的に書きますと。

なんでも、彼の友人(会社社長)がコロナの影響で経営難になり、複数の店鋪テナントで大家に家賃の減額交渉をしに行ったそうで。しかし「No!」との返しをされたところが数件あり、「では撤退する」「どうせ次の入居者なんて入りっこないだろ」とツイート。そのツイートを見て、西野氏は「大家は経営者としてセンスがない」「こんなに恩を売れるチャンスなんて、滅多にないのに」と言っており。


あのぉ〜、お金のやりとり、契約の問題で、「恩を売る」もクソもないのでは? レストランで、客が注文時に「実は貧乏なんです、値引きして下さい」と言うようなもんですよ。大家は家賃減額に応じる必要なんて、全くないです。大家にだって生活はありますし、なんなら借金まみれで、困窮しているのかもしれない。ましてや相手はこんな、断られた腹いせに捨て台詞ツイートをしちゃうような残念な輩ですから、この大家さんの判断とセンスの方が正しいと思います。

もちろん僕も、この不況下で日本中の方々が毎月の家賃の支払いに苦悩していることは、理解しています。なので、政府が3分の2を補助する、といった案には僕は大賛成です。しかしなんにしても家賃は、契約通りにきっちり支払うべきです。せいぜいで、猶予の依頼までです。なんで、減額に応じない大家が悪者扱いされるの?「大家さんが応じてくれたよ♡」話だって、そんなもん美談でもなんでもないですよ。


根本的に、順序が逆なんですよ。なんで“恩を売る”の方が先に来るの? たとえば前述のレストランでも、超常連でクチコミ力もスゴくて売上げに貢献しまくってくれている、そんな大事な顧客が「今日だけ値引きをしてほしい」と言って来たならば、検討の可能性もあることでしょう。コロナ騒動で、世界中がハチャメチャになっている今は、“未来に恩返しをしてくれそうか”が求められるのではなく、“過去に何をしてくれたか”が問われるわけですよ。皆がピンチの時というのは、恩を売るチャンスではなく、それまでの恩を返すタイミングなんだよ!!

そもそも“恩”というのは「今、これやっといたら、後で得するかも」といった類いのものではないです。そんな好意は、あざとすぎるし、キモチが悪い。普段からあくまで自然体で、ウソをつかず信頼が置けて、人に善くし、人から愛される者が、こういうピンチの時に皆から助け舟を与えられるのですよ!!“恩返し”とは、行為にではなく、人間性に対してするものなんだよ!!


僕の、一部のクラウドファンディングに対する不快感も、それに連なる要素があります。“必ず恩返しするから、助けてください!”のスタンスの者が多すぎる。「いやいや、あなたの、過去の貢献や信用が、跳ね返って来るんですよ!」と、僕は声を大にして言いたい。何も考えずに、気軽な金集めの手段として「支援して♡」となっているキラキラ連中が尽きないから、巷では“クラファン乞食”とか呼ばれてしまうわけですよ。知らない者に金を渡して、「恩返ししてね!」の圧をかける支援者がいるとすれば、これもおかしい。それはそれで需要と供給は成立しているのでしょうが、そんなのは極めてマイノリティ&小コミュニティ内の話でしょ。宗教の村みたいなもんですよ。


僕はサービス業の経営者として、“滞在”という商品を売っているわけですが。「ゲストハウス業界が存亡の危機です。だから、泊まりに来て下さい」とだけは絶対に言いません。死んでも言わない。僕はどんなにピンチの状態になろうが、快適な滞在や楽しい滞在といった、“商品の価値”以外のものを、売る気は全くないです。「恩で買ってください」をやってしまった時点で、経営者としてはオシマイですよ。まさに愚の骨頂、情けないにもほどがある。


“価値”を売るとは、すなわち“信頼”を売るということです。それは相手の期待に応える、安定したクオリティを保った商品を、いつでも確実に提供し続けるということ。何かの提案、活動や主張を始めて、それに顧客や他者を巻き込んだのなら、ブレずに鉄の意志で貫くということ。

思いついたら行動に移すのはいいことですが、そのどれもが中途半端で結局、何が軸なのかさっぱりわからない。そんな奴をどうやって信頼すればいいのよ? 安易なクラウドファンディングを乱発して、支援がいまいち集まらなければ「別にお金集めが目的ではない」と、ケロリと言ってのける。「ゲストハウス業界を救ってほしい!」と、勝手に業界全体の総意のように訴えておきながら、支援を募る努力も工夫もすることなく、ただの自己アピールの場として利用。そして自分の宿は、あっさりとシェアハウスへ移行。そんな軽すぎる奴を、どうやって信頼すればいいのよ?

救いを乞うのであれば、その前にまずは、貢献や信用を積み重ねろよ。「自分が成り上がりたい」「中心地にいたい」の私欲が、前面に出過ぎだよ。順序とバランスがおかしいって。今のお前は、全くもって信頼に値しないよ。

以上、決別宣言でした!!



まぁ、僕がクラファンに手を出さないのは、これまでの人生で他者に対して貢献なんぞした覚えはないですし、そんな面倒なのに縛られて生きたくない、と思うからでもあります。僕がやってみたところで、支援3人、額15000円とかでフィニッシュでしょうしね・・・と、最後に自分を堕として、小猾くバランスをとっておきます(笑)。


“ゲストハウスを救うため”の引っ越し提案? ハァ・・(溜息)




8 件のコメント:

  1. こんにちは。
    以前、yawpさんに泊まったことがある者です。
    blogの内容とは関係ないですが、沢木幸太郎の深夜特急に感化されてバックパッカーになる若者をどう思いますか? 自分は結構、深夜特急好きなのですが。。
    あなたの意見を聞いてみたいと思いコメントしました。
    唐突にすみません。忙しければ、スルーしてください。

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    1. コメントを、ありがとうございます。

      バックパッカーになるきっかけは、元々は外的要因が大きかったと思います。昔であれば主には深夜特急、僕の世代では猿岩石ですかね。良いか悪いかではなく、「それらに影響を受けて・・は、あるある」という感覚です。全然、否定的な考えはありません。

      最近のバックパッカーは、ちょっと違うというか、ステータス目的(SNSでの「いいね」獲得のため)の傾向が強いと感じますので、深夜特急や猿岩石の影響はほとんどないと思われます。

      ちなみに僕は、父親が世界放浪中にアメリカで僕の母親と出会い、結婚しておりますので、そもそもそういう血統です(笑)。

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  2. 返信ありがとうございます。確かに最近は本や映画に影響されて、、というよりはSNSにあげるため、というのが目的になっていることが多いかもですね。

    これまた関係ないけどP・アルモドバルの映画おもしろいですよ。

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    1. ペドロ・アルモドバルは「私が、生きる肌」までは好きな監督でしたが、「アイム・ソー・エキサイテッド!」の酷さで失望しちゃいました。「ペイン・アンド・グローリー」はよさそうなので、また映画館で観ると思いますが。

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  3. エコノミークラスの乗客が全員寝てるという設定がありえませんでしたね。。
    アッバス・キアロスタミもいいですよ!

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    1. お〜っ、渋いとこつきますね(笑)。僕はおそらく「友だちのうちはどこ?」しか見ていませんが。彼はたしか、お亡くなりになりましたよね。違う作品もチェックしてみます!

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  4. 是非!「風が吹くまま」を見てください。オススメです。最近、DVDがリマスターされたと思います!

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    1. 見てみます! ありがとうございます!!

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