2018年10月27日土曜日

僕は、安田純平氏を尊敬する。




先日、久しぶりに大口予約ゲストの、ノーショウが発生しました。細かいノーショウは相変わらず頻発していますが、人数×泊数で20を越える予約の迷惑度&ダメージといったら、ハンパないです。怒りを通り越して、ただただ、呆れます・・・。


しかし最近の僕には、このさらに上を行く、“呆れまくり”が。それはシリアで三年四ヵ月に渡り拘束されていた戦場ジャーナリストの安田純平さんが、ついに開放され、無事に帰国の途についたニュースにまつわることです。


世間(ネット上)では、なぜか彼に対するバッシングが嵐のように吹き荒れ、「謝罪しろ!」「自己責任だ!!」などと言いたい放題。命の危機に直面し、なんとか無事に生き延びた者に対して芽生える感情は、なによりもまずは「助かってよかった!」ではないのですか? そもそも安田氏は謝罪コメントを出していますし、さらには「私に何が起きても、すべては自己責任」だと、シリアに渡航する時点から訴えており。身代金の要求には応えないでほしい、とまで発信していたのですよ。

謝罪した者に「謝罪しろ!」、自己責任だととっくに認めている者に「お前の自己責任だからな!」・・・なんなんですかこの、“噛み合っていない”感じは? バッシングしている連中のその感覚は、僕には100万%理解できない。


テレビ朝日の番組で、解説員の玉川徹氏が、こういった連中に対して異を唱え、「むしろ英雄として迎えるべきだ!」との論を展開していましたが、僕は彼の意見に賛同です。英雄とは言わないまでも、僕は安田氏に対して、尊敬の念を強く抱きます。

しかし玉川氏のこの意見に対しても、ネット上では批判の嵐でクソミソに。見たところ、彼の意見に賛同しているのは、30人に1人位でしょうか。比率にして、3%か・・・。


まぁ、これはあくまでネット上でのバッシングなので、世間一般の感覚と完全に合致しているとは思いませんけどね。それにしても、なんなのこれ? この偏り、皆で一人の人間を一斉に叩く異様な光景。しかも相手が、つい先日まで死の危機に瀕していた“弱っている者”。日本人のこの、さらに痛めつける感じ・・正直、キモチが悪すぎるんですけど・・・。


幸い、僕の周辺にはそんな者はいない(僕の知る限り)ので、直接会ってこの件でケンカした、なんてことはないのでよかったのですが。また、ここ数日間は、僕はウチのゲスト達とも何度かこの話題になりましたが(実は旅行中のゲストもけっこう、日本のニュースをチェックしているのですよ)、僕と話した全員が、
「助かってよかったね」「果敢に戦地に出向く安田氏は、素晴らしいジャーナリストだ」
という意見でしたよ。彼が過去にも何度か拘束されている、というのを知ったゲストからは、さすがに「愚かだ」的な意見が出るかな・・と思いきや、それにすら「スゴい人だ! なんという勇気だ!!」と絶賛で。

これにより僕が理解したのは、外国人ゲストたちは根本的に、ジャーナリストをリスペクトしているということ。ジャーナリストが支配組織に対し、ペンや写真で戦う姿勢は崇高であり、賞賛されるべきという意識だということ。これは、間違いありません。あなた(このブログの読者さん)の周りにも、もし外国人の友人知人がいたら、この件に対する意見を聞いてみてくださいな。



ここからはさらに、政治的な話になりますが。


僕は世界を一周した際に、シリアにも二週間ほど滞在しましたので、いちおう現地を知っています。もちろん、内戦が起きる前の、比較的平和な時期の訪問ですが。シリアという国の素晴らしさ、シリア人の優しさ、純粋さを、実体験で知っています。なので安田氏の、現地に飛び込んだ思いは、僕なりに共感します。“いてもたってもいられない”感、と言いますか。

かなり大胆なことをあえて書きますが、僕は「世界にはテロリストなんて存在していない」という考えです。権力を握る側が、自身にとって都合の悪い相手に対し「あいつはテロリスト」と一方的に設定しているだけのことだ、という意味です。僕は、世間でテロリストだとされている組織(IS等)のことを、肯定や賛同をしているわけでは全くありませんよ。


「それでも僕は帰る」という、2015年公開の映画があります。何年か前の話ですが、この映画の上映会&トークショーが都内で企画されており、僕はそれに参加しました。この映画は、シリア内戦において反政府軍のリーダーだった19歳の青年、バセットに密着したドキュメンタリーなのですが、トークショーの最後に、観客からの質問コーナー的な時間がありまして。



そこで僕は、大きく失望しました。おそらく5人ほどだったか・・の質問者は、映画を見た上で、総じて皆がバセット=ヒーロー、反政府軍=正義、政府軍=悪、というような印象を確定済みの上での、質問内容だったのです。

シリア政府(アサド)はロシア政府(プーチン)と大の仲良しですからね。一方で、反政府軍を支援しているのはアメリカで。僕らはフラットな目線で世界の情報を手に入れている、と勘違いしている者が日本には多いようですが、僕らがニュース等で知られる世界は、あくまで“アメリカ・サイド”に偏ったものですよ。

この映画を見て、反政府軍=正義だとあっさりと刷り込まれてしまった人は、すさまじく愚かです。シリア政府、ないしはロシア政府、さらにはロシア・サイドの国々からすれば、この反政府軍こそが、=テロリストですよ。彼らからすれば、シリア政府=正義なわけです。ニュースでも、そのように偏らせて報じていますよ。


この例で理解していただきたいのですが、“テロリスト”の定義なんてものは、完全に“見方による”のです。毎日ジャイアンに虐められるのび太が、ある時ドラえもんに頼んで仕返しをする。すると今度はジャイアンが「のび太は俺に攻撃して来た! テロリストだ!」と決めつけ、さらに虐める。もしかしたらジャイアンは、ドラえもんと裏で繋がっていて、仕返しをあえて受け入れてそれを今後の虐めの根拠にするつもりなのかもしれない。もしくは、実はジャイアンとのび太が結託していて、ドラえもんに道具(金)を使わせて双方で利益を得ようという魂胆なのかもしれない。

そんな“テロリスト設定”に、定義なんてないでしょう? 正義も悪もないでしょう?

それが、戦争というものです。


そもそも、シリアの反政府軍はISと密接な関係ですし、するとISはアメリカとも繋がってしまうわけで。圧倒的に世界最強のアメリカ軍が、一介のテロ組織?であるISを、なぜ4年も5年も放置し続けるんですかね? 潰そうと思えば容易いだろうに、攻撃をしたことすらない。シリアで過去に何度か、IS(&反政府軍)に対しての空爆を決行したのは、ロシア軍ですよ。アメリカではありません。この内戦におけるアメリカ軍の攻撃対象は、常にシリア政府軍です。

そして、ISの長期に渡るテロ活動?の、資金や武器を援助し続けているのは、どこのどいつですか? なぜ、ISも反政府軍も、構成員のほとんどが外国人なのですか? なぜ、安田さん開放の情報提供元が、カタールだったのですか? ・・・そんなこんなで、ISが、単なる凶悪な虐殺&戦闘集団ではないことは、ちょっと考えればわかることです。そこには、世界の歪みのような、複雑に入り組んだ根の深い“何か”があるのです。



しかし僕は、陰謀論めいたことをここで語りたいわけではありません。真実は、僕にも全くわかりません。しかし、僕は知りたい。誰が企み、誰が利用し、誰が支配しているのか。現地で本当は何が起きているのか、現地の人々がどれだけ苦しみ、どれだけ悲しんでいるのか、を。いきなりの答えは無理だとしても、せめて、そのヒントを知りたい。

戦場ジャーナリストたちは、僕にそれを伝えてくれる。伝えるために、命を懸けて戦ってくれている。その時点で、僕は彼らに対しては尊敬と感謝の念しか抱きません。僕にはそんな勇気はなく、確実にできないことですので。そして彼らの存在こそが、欺瞞と洗脳で密封されたこの世界から、僕らが抜け出すための風穴となるわけです。



僕は、世論には迎合しません。賛同者がたったの3%でも、無問題。これによって僕が嫌われてウチに来る日本人ゲストが著しく減ったとしても、全然かまわない(笑)。

“世界で起きていること”に関心がなく、テロリスト=悪、テロリストがいる=危険、そんな地域に何度も突撃するジャーナリスト=愚か者・・・という表面的な視点、先入観から脱却できない者々が、今回の件で安田さんをバッシングしているのでしょう。安田さんの、はるか昔の政府批判の発言をわざわざ引っ張り出してきて、「批判していたくせに、政府に助けられるバカ」だと???


・・・バカは、お前らだ。



僕が愛する国シリアの、平和の実現を祈ります




2 件のコメント:

  1. そのとおりですね、私もそう思います。

    これって日本人らしい〜反応と言えばそれまででしょうが。

    日本人はもっともっと世界へ出てほしいです。観光ではなくて。

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    1. ありがとうございます!

      今回はネット界隈ではマジョリティであろう母集団相手にケンカを売っていますので、どちらかというと批判的なコメントが来るだろうな、と予想していたのですが(笑)。

      僕も日本人には、世界で何が起きているのかに、もっと興味を持って欲しいです。

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