2020年8月20日木曜日

ホステル(ゲストハウス)経営って、儲かるの? '2020!!





このブログの、過去最高の閲覧数の記事は2017年5月の【訪日観光客数の、フェイクを暴く!】ですが、これは一発屋といいますか、短期で豪快にバズッただけでして。なので、実質的&安定的に最も読まれている記事は、2015年8月の【ホステル(ゲストハウス)経営って、儲かるの?】です。

大げさ&ドヤ気味に言えば、この記事を書いたおかげで、僕やYAWPの存在は日本全国のホステル&ゲストハウス・オーナーに知られる事になり、日本中から開業志望者がウチに相談に来るようになりました(最近はサッパリですが)。

要は、今の僕の業界内ポジショニングにとって、この記事の存在は良くも悪くも影響が大でして。寄稿から、ちょうど5年。なんだか個人的にメモリアルな気分になったので、今回はその続編のようなつもりで書きます。


しかし業界人の皆さんは、タイトル(ホステル経営って儲かるの?)を見た時点でツッコミたくなるかもですね。「このコロナ禍だぞ! 儲かるわけないやろがい!」との直球なご意見には、反論の余地なしなのですが、今回は一旦、昨年に戻った気分になっていただき、コロナのことは忘れてください。

また、「今のこのご時世に、宿業を興したい者なんぞどこにもおらんやろがい!」と思う方もいるかもですが・・それはおそらく間違いです。実際に当の5年前の記事は、ここ数ヶ月、また閲覧数が伸びています。同人物の二度目以降の閲覧はカウントされないシステムなので、これはおそらく新規でゲストハウスの起業に興味を持ち、ネット検索し1ページ目でヒットしたこの記事を開いている方々です。東日本大震災の時もそうでしたが、今のような未曾有の事態に落ち入ると、それなりに多くの人々は人生を見つめ直すというか、「やりたいことをやって生きよう」・・となる傾向があります。




さてさて、いきなりですが例え話をします。


あなたがレストランに行き食事をしていると、隣りのテーブルには二人の男性が。どうやら、ダイヤモンドの指輪の、セールスをしている様子。二人の、こんな会話が聞こえて来ました。

男A「当社はこの指輪を、普段は1000万円で販売しているのですが、あなたにだけ特別に、半額の500万円で提供いたします」

男B「えぇ!? 半額ですか・・・そりゃありがたい話ですけど、さすがに500万は厳しいなぁ」

男A「実はここだけの話、こちらを加工する前の原石の、当社の仕入れ値は600万円です。売買契約書のコピーをお見せしましょう。・・どうですか? 今回はそれが500万で手に入るわけです。すごくお得な話だと思いませんか?」

男B「おぉ・・・たしかにすごいな。・・かっ・・・買いますぅ!」


・・・あなたがこのやりとりを隣りで聞いていたとしたら、ズッコケませんか?「なんちゅう荒い、雑で簡易な詐欺だ・・」と呆れてしまいませんか?

第三者の評価目線がなく、男Aからの一方通行の言説を、なぜ男Bは全く疑うことがないのでしょうか? もちろんAは、ウソは一言も言っていない可能性が高いです。しかしBは、一つの原石→一つの指輪、と、なぜ妄信するのですか? 原石から三つの指輪を作成し、それぞれを500万で売れば、合計で1500万。差し引き900万の利益ですよ。

そもそも、Bが特別な利を得るのであれば、相対的に、その分の損をしているのは誰なのでしょうか? Aの会社ですか? 損をする側がなぜ「買ってほしい」と言い寄って来るのですか? ドMですか?


世界的に著名な投資家、ウォーレン・バフェット氏の格言

「ポーカーをやり始めて20分経っても、まだ誰がカモか判らなければ席を立て。お前がカモだ」

この教えは、商売に限らず、このカオスな世を生きる上で重要なセンスであると、僕は思います。



例え話が長くなりましたが、今度は、こちら(↓)のリンク記事をご覧下さい。

「利回り30%も可能」のはずが損失3500万…ホステル投資の実態〈楽待 不動産投資新聞〉


はい。まさに先ほどの例え話と同様の、ズッコケ案件です。まさに「お前がカモだっ!」でドォーーーーーン!!(© 笑ゥせぇるすまん)です。


上記の記事や、記事内に貼ってある動画(11分程度なので、ぜひ見て下さい)では、被害者のホステルの名称は完全に伏せられておりますが。実は僕は、動画を見て「オゥ、さてはあそこだな」と勘づき、検索したら一発で正解でした。僕の業界アンテナは、最近は全く磨いておりませんでしたが、まだまだ錆び付いていなかった〜(変な自画自賛w)!!

とはいえ僕は、伏せられていた名前をここでわざわざ暴露して、ドヤ顔をする気はありません。普通に賢い方であれば、以降の文章を読んでいただき方法を考えれば、すぐに辿り着けますよ。



僕は過去に、当ブログの記事にて、何度も訴えていました。「ホステルやゲストハウスを“建てさせる”ことで儲けようと企む輩が、発生しております」と。

例えば、2019年8月の記事【不都合な真実! 衝撃的な急ブレーキ!!】では、



2018年4月の【アベマTVの番組についてを、ここに清算する!!】では、




よって上記のリンク記事は、まさに僕が懸念していた通りの事案でして、“被害者が請負企業を訴えるに至った”には、僕の感想としては「そりゃそうなるわ〜」です。かぼちゃの馬車への集団訴訟と、同じ構図。原告側の弁護士まで同じ。被告側の「リスクはきっちり説明した」「相手は納得の上で、自己判断で契約書に判を押している」的な反論も同じ。“ガイアの夜明け”あたりが糾弾すれば、さらにそっくりになりますので、テレ東さんには期待をしてしまう・・・(笑)

これは、僕が個人的に懸念していた・・というよりも「あそこはかなりエゲつない商売をしている」「いずれ事件化するだろうな」と、業界内の話題で普通に出ていたことです。僕が知った最初のきっかけは、たしか某有名ホステルの経営者と飲んだ際に、彼から聞いたかと。

ちなみにその、かぼちゃの馬車への集団訴訟では、原告側(シェアハウス・オーナー達)が軒並み、勝利しました。つまり、司法は「ウマい話ばかりをして信じ込ませて、売ったもん勝ちは許されない」という、姿勢を示したということです。よって今回の訴訟でも、おそらくは企業側に厳しい判決が下ると思われます。


しかしながら、このホステル投機案件。もちろんこの企業の強欲(判決前なので、詐欺とは書きません)っぷりには激しい怒りを覚えますが、それと同時に、被害者の彼の“守備する気がゼロのザルっぷり”にも呆れてしまいます。先日のCL準々決勝、バルセロナvsバイエルンの後半か!!?

僕もいちおう起業家ですし、大金が動く契約の経験は、人生で何度かあります。もちろん案件一つにつき、相見積もりは必ず数件とります(宿では、8件もとりました)。しかしリンク先の記事に載っていた見積書は、「こんなテキトウなのは見たことがない」レベルです。◯→100万、□→200万、△→10万と、、ざっくり計算にもほどがある。僕がこんなのを出されたら、ブチ切れて破棄して追い返しますよ。

さらに、なんなんですか? “事前協議:20万”って! ザル守備相手に容赦せず、終盤にダメ押し点を入れまくった、コウチーニョ的なオマケ請求ですか!? 前述のレストランの例え話でいえば、二人分の食事の会計をなぜか顧客の側の男Bが支払った、みたいなことですよ!!

“企画コンセプト:20万”にも「なんじゃそりゃ」です。20万も吸い取って、絞り出したのが“都会に現れた「青の洞窟」”ですか? 客を舐めるのも、いい加減にしろ!! そして、クライアントはそれくらい、自分で考えろ!!!



・・・と、ツッコミどころをあげるとキリがないので、ここからは「僕であればこちらの起業はこうやって、この額で収めてやりますよ、へへへ」という妄想をします。


まずこの記事を書くにあたり、僕はメールにて、工務店を経営している知り合い(年上の方なので、友人とは言いにくい)の方にスクショ写真やサイトリンクを送り、「こちらのテナント工事は、いくらくらいで請け負いますか?」と聞いております(件の訴訟絡みの話はせずに)。工事前の写真は無くの、もちろんアバウトな話なのですが、これに関しては僕のテキトウな見解ではなく、プロの意見だということです。

彼の回答は「800万。クライアントがシビアな人ならば、絞って700万。ユルい人なら1000万」でした。これは、テナント工事の発注経験がある僕の推測値と、大きなズレはありません(これってけっこう重要で、こういった大金が動く契約では、客のスタンス、舐められっぷりによって数百万の差がつくということです)。

しかし、実際の見積もりでは・・・工事費用は1700万強。工務店に直の発注ではなく、間に入った請負企業の中抜きがあるとしても、せいぜいで+200万でしょう。しかしこの会社は、工務のプロが上限1000万と読んでいる案件で、+700万もの請求をしているのですよ。ボッタクリにも、ほどがある!!

あ、またしても毒ツッコミになってしまった。ほんとキリがないので、僕なりの見積もりを画像にして、ここに添付します。



ちなみに僕は、ドヤるつもりはありませんが、ゲストハウス開業に向けての物件購入の際に、およそ300万円の値引き交渉に成功しております。そんな、まさしく“シビアなクライアント”ですから、工事関係費の計はきっちり700万で。


ここからは僕は、大嫌いな“自称コンサルタント”の、真似事をします(笑)。

工事を始めとする、ハコを作る経費の総額は、画像のように835万。さらに、テナント契約のもろもろで300万を費やしたそうですから、合わせて1135万。初期の運転資金を残しておくのも基本ですから、ここはキリよく1200万としましょうか。これが、この起業案件において僕がコンサる、開業に必要な資金となります。

被害者の彼は、自己資金700万円を突っ込んだそうですから、僕のこの妄想でも同額を。すると足りない資金は500万ですが、公庫は“自己資金が半分”を貸付け決定の判断目安にしていますから(最近は三分の一程度でも貸すようですが)、よっぽど履歴に傷がない限りは確実に借りられます。

というか、個人での起業の場合、借金は500万くらいに留めておくのがいいですよ。1500万を借りた僕が言うのは、変な話ですが(完済済みです)。500万程度であれば、いきなり失敗してもどうにかなります。やり直しが利きます。

この500万の借金返済は、月々10万円でおよそ4年半、といったところでしょうか。5万ならば10年ですが、「ここは少々、強気で行こう」とコンサっちゃいますかね。負債を10年も抱え続けるのは、キツいもんなぁ。


さて。

こちらのホステルは、都内の城東エリアにあり、ドミトリーのみのキャパ20ベッドだそうです。もちろん僕は立地も把握しておりますが、はっきり言いまして、厳しい。そこそこ大きな街ですが、中心地ではないですし。一般的な外国人には全く知られていない駅名で、日本人がわざわざ選ぶような要素もない(むしろ、治安が悪いイメージ)。空港等へのアクセスも、あまりよろしくない。

宿の内装や設備等も・・・何か特別な訴求力があるようには、全く思えません(失礼ながら)。よって、2019年当時の僕の、業界情勢把握を元にすれば、僕は価格設定を

平日:1800円(繁忙期:2000円、閑散期:1600円)
金土:2400円( 〃 :2800円、 〃 :2000円)

と提案します。客単価は、平均で約2000円ということになります。実際には平日:3000円、土日祝:4000円と提示されたそうですが(一般的に宿が混むのは金・土で、平日・土日と分けているこの会社は、ほんと何もわかってない・・)。そんな価格は、都内ではごくごく一部の特別な人気宿でしか成立しておらず、「現実的ではない設定を元に収支シミュレーションした」と、裁判では不利な要素になるでしょうね。


そこから僕が弾き出す収入予測は、こんな感じ。先ほど「見積もりがテキトウすぎ!」とヒートしたくせに〜の上での、思いっきりザックリな計算ですが(笑)。



そして、支出はというと。リンク記事内で、テナント家賃は286000円と出ておりますから、まずはそれは必須(こちらも中抜き有りで、水増しされている可能性は高いですが)。さらに前述の、公庫への借金返済が月10万。以下は、稼動が50%との想定を元にしたものを、同様に画像で(↓)。もちろん、請負企業がヒルのように吸い取るつもりでいた、運営委託費:432000円やシステム利用料:108000円の契約は、破棄しますよ。マジで強欲、やりたい放題だな。バイエルンの左SB、デイビスか(クドいッ)!!



はい。上記の通り、稼動50%(ゲスト数平均10人)では、収入が60万・支出が69万となり、9万円の赤字です。同様に、60%では支出が72万で、収支は±0。70%では75万となり、ようやく9万円の黒字です。それで利回り19%で、開業資金をペイするまでには、5年強(収益全額を自分と公庫への返済に充てたとして、初期投資の元を取るまでにそれだけ費やすということ)。もちろん当時であれば、「オリンピックの期間にはアホほどに値上げして、一気に稼ごう」という狙いは理解できるところですが。


・・・長々と妄想し、似非でコンサって、結局のところ僕が何を言いたいのかといいますと。

開業資金を、絞りに絞って計1200万に抑え、出来る限りを自力でこなし、あらゆる無駄を削減したとしても、この案件では勝ち目はありませ〜ん!!

ということです。損益分岐点の稼動が60%、70%でもペイに5年。仮に「起業するからには毎月20万くらいは得たいな」という欲がある(あって当然です)ならば、80%でも足りません。

そんなムリスジなビジネスに、貯金700万を突っ込むだなんて、簡易宿所業を少しでもカジッたことのある者からすれば、確実に「無謀だなぁ〜」となりますよ。にもかかわらず被害者の彼は、強欲企業に言われるがままに、−2700万という衝撃的な数字からスタート。さらに毎月50万を吸い取られ続けるという、地獄のような契約をしてしまったわけです。彼のディフェンスがザルだったとはいえ、ここまでのカモ扱いは、いくらなんでもヒドい。非道いぃ〜(号泣)!!



過去に僕の元に相談に来ていた、ゲストハウスの経営を夢見る方々は、起業の経験が無い方が大多数でした。そんな方々に向けて、真面目に注意喚起をしたいとの想いから、僕は今回の記事を書きました。あなたが何も考えず、勉強せず、人を疑うことなく突撃すると、件の彼のように3500万円の負債を抱え、自己破産の道を選ぶハメになる可能性があります。僕は、彼のような被害者をこれ以上は、一人も増やしたくありません!!


はい。宣言通りにコロナを完全に無視した、ゲストハウス起業志望者への熱量高めのメッセージでした。現実に戻ると、僕は「観光業界の復興は4年後」と推測しておりますので、今後4年間はこの記事の収支予測よりも「さらに、圧倒的に厳しいのだろう」「稼動70%なんてはるか先。年で10→30→50%って感じ?」といったノリで、起業のプランニングを楽しんでくださいです!!





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