2016年7月29日金曜日

流行るゲストハウスって、どんなの?


前回、冒頭に「梅雨が明けましたね」と書きましたが、まだ明けていなかったようですね・・・(どうもすみません)。東海地方が18日に明けて、それから10日も経って関東が明けるって、どういうこっちゃねん。



さてさて、その前回の投稿、内容がエゲツなかったせいか、それなりに反響がありました。その後のウチの予約状況はというと、12〜29日(本日)の18日間のトータルで、およそ75件。昨年と比較して、やはり15%ほどのダウンが続いています。


特に先週、19〜25日の一週間は毎日ゲストが3〜7人ほどと、ハイシーズンの7月にはあるまじき状況で、ちょっとヘコミました。まぁ、予約を受け付けたのが12日からですからねぇ。来日の直前に、あわてて宿を探すようなゲストは、そんなにいなかったということなのでしょう。今週に入ってからはフルが続いているので、経営的に問題はないのですが。



さてさて、今回は、前回の続きというわけではないのですが、“ついにサバイバルレースが始まった!”という話から付随する、“では、どんな宿が生き残るのだろうか?”の話を書こうと思います。



ウチに開業の相談に来る方に、僕がよく出す例え話なのですが、この業界は、シャンパンタワーのような構造になっています。一番テッペンに、超人気宿がある(5軒ほど)。そこは、基本的に一年中、常にフル。その下に、人気宿がある(10軒ほど)。こちらはハイシーズンは常にフル、ローシーズンでも7〜80%をキープ。その下に、経営的にはギリでやっていけているくらいの普通の宿があり(20軒ほど)、その下に、ゲストがあまり入らず苦しんでいる宿がある(40軒ほど)。都内に今ある80軒弱の宿を、イメージ先行&ムリヤリにタワーっぽくまとめてみると、そんな4段階なイメージです。


ゲストは、タワーの上段の宿が空いていれば、ほぼ間違いなくそこを選びます。超人気宿がフル→人気宿がフル→普通宿がフル→で、ここまで来て、やっと4段目の宿が選択肢に入ります。下段にいればいるほど、シャンパン(ゲスト)はなかなか降りてきません。ハイシーズンにはシャンパンの量も多いため、ある程度は行き渡りますが、ローシーズンにはへたしたら、3段目すら空になってしまいます。ウチがどこの段にいるのかは、何とも言えないところですけどね。いちおうそれなりに利益は出ているので、2段目〜3段目の間くらいでしょうか。



根拠となるデータの開示が無い上での話で申しわけないのですが、経営的に余裕があり、きっちりと安定した利益を出せているところは、おそらく80軒中、15軒くらいしかないんですよ。ほとんどは、ギリギリor経営難です。ヤバいです。そしてその15軒の内の、大半は業界大手。カオサングループ系列、K'sハウス系列、バックパッカーズジャパン系列、のどれかです。それら以外で、「あそこはすごく流行っているなぁ〜」と言えそうな宿は、僕の思いつく限りでは、都内には5軒くらいしかありません(あえて名前は書きませんが)


その15軒、特に大手系列のところ以外の5軒の、一軒一軒で何が優れ、何がゲストを惹き付けているのかの分析を、僕はするつもりはないです。そんなの、おこがましいですしね。ただ、ある程度共通していることはあると思います。以下に、それを列挙します。



①立地

人気の宿は、やはり立地がいいです。しかし駅名の浸透度、有名さは、あまり重要ではないような気がします。そもそも、多くの外国人に名が知られている新宿や渋谷などに居を構えているところは、ほぼ皆無ですしね。

さすがに新宿まで1時間以上かかるような駅ではどうかと思いますが、それよりも重要なのは、最寄り駅からいかに近いか、です。人気の宿で、駅から5分以上かかるようなところは、ほとんどありません。


②価格

はっきり言いまして、人気の宿は、価格を安くは設定していません。かといって、極端に高くもないです。2500〜3500円くらいの間が多いです。それよりも、以前から僕が提言し続けている、“価格をコロコロと変えているかどうか”。これは人気宿ほど、“変えていない”という印象が強いです。まぁ、安定していて余裕があるわけですから、変える必要がないですしね。ドッシリと地に足が着いた、横綱相撲だということです。



③ベッドの質、スペース的余裕

ホステルのメインの役割は“旅人たちが寝る場所”ですから、ゲストが使う施設で最も重要なものはベッドである、というのに意義を唱える者はまずいないと思いますが、人気宿で“部屋にゲストを詰め込みまくり”のところは、全くありません。どこも、スペース的に余裕のあるベッド数で、質の高い、それなりに大きなベッドを用意しています。空間的な考えと、こだわりがあります。

極力小さいベッドを、ひたすら部屋中にギュウギュウに詰め込んだだけの、まるで難民キャンプのような状態になっている宿は、その時点で不人気になることが確定です。さらにそれがギシギシうるさいパイプベッドだったりした時には、残念すぎて目も当てられません。また、人気宿ではキッチンやリビング等のスペースも、広さに充分に余裕があります。キッチンがない、リビングが狭い、なんて宿ではかなり厳しいです。



上記の三点が、人気宿の共通項。宿の評価に直撃する、大きな分岐点です。この三つを高いレベルで備えている宿は、ほぼ間違いなく人気になると言えます。

そしてさらに、僕が個人的に重要だと考えることは、他にも二点あります。それは何かというと、



④マーケット分析力

僕に開業の相談に来る方々の多くは、失礼ながらもはっきり言いますが、ビジネスのことを全くわかっていません。完全にイメージ先行で、「ゲストハウスのオーナーになって、たくさんの旅人と交流して、世界の人々が交わるプラットホームのような・・・」と、何やら瞳をキラキラさせながら語ります。ほとんどの方が、ファンタジーのレベルでの、開業を夢見ています。

そういった方々には、僕は「それで、開業資金はいくらなんですか?」とあっさり聞きます。さらに、「都内に何軒のホステルがあるかご存知ですか?」や、「今後の業界の展望はどう考えますか?」等のシビアな質問を、たたみかけます。

この業界のこと、マーケットのことを全く研究せずに、勝ち残れるわけがないんですよ。中には、「自己資金はゼロだが、銀行から1千万借りるつもり」「稼働率の予想は、90%。私なら月の半分以上は、フルにできる」等といった、ファンタジーどころかもはや、呆れてしまうレベルのケースも少なからずあります。

この業界は、“ビジネスとしての計画が綿密でない者が参入したがる”という、その傾向が特に強いと感じます。素人でも簡単に儲かりそうなイメージなんですかねぇ?「オリンピックがやって来ますし!」との言葉を、これまでに何度聞いたことか・・・。

要はこのサバイバルレース、ビジネスセンスと分析力無しで、勢いだけで戦いを挑んでも、勝ち目は全くないということです。



⑤柔軟性

これは正直、僕もまだまだ足りていない要素だと思います。「ウチはこんな宿です!」という、個性やポリシーを持つことは大切ですが、それにアジャストしないゲストも、もちろんたくさん来ます。そんな彼らに対して、「ウチを選んだのが悪い」となっていいわけがない。どんなゲストでも、一定のレベル以上は楽しめ、心地よく過ごせる、そんな宿をオーナー&スタッフは作る必要があります。

「ホステルとは、こういうもの」というはっきりした定義は、実はないのです。皆が穏やかに過ごし、静かに慎ましく眠るところもあれば、皆でパーティーざんまい、朝まで飲んで毎日超エンジョイ、なところもあります。宿側は、その時その時の、ゲストの傾向に合わせればいいのです。穏やかなゲストが多い時には、穏やかな宿に。パーティータイプのゲストが多い時には、にぎやかに楽しめばいい。

「ウチはこんな宿です!」を宿側が押しつけるのは、ゲストたちからすれば、うっとおしいだけです。YAWP!は基本的にはにぎやかな宿なのは間違いないですが、穏やかな日も多分にあります。そして実は、ウチのリピーターさんのほとんどは、静かに過ごすタイプの方々です。




以上が、僕が重要だと考える、二点の要素です。そして今度は逆に「人気の差にはほとんど関係ない」要素を一点。これはホステルのオープンを夢見る方々が、勘違いしているケースが多いことなので、あえて書きます。



⑥スタッフの質、熱意

以前、僕がYAWP! の強みを研究した際にも書きましたが、日本の宿、東京都内の宿で、スタッフの質が悪いところなんて、はっきり言って皆無です。スタッフがフレンドリーでヘルプフル。これは、もはやマスト条件で、必ず備えなければいけない要素です。人気の宿も、そうでない宿も、すべての宿のスタッフが、ちゃんとしています。ちゃんとしなければ、あっという間に経営難に落ち入ります。

ましてや、熱意なんぞ。ホステル開業志望の方々は、「ホステル愛だけは誰にも負けない!」的なアピールをしてしまうタイプがとても多いのですが、そんなもの、武器になるわけがないんですよ。「私(私たち)は、最高に魅力的で素晴らしい宿を作る!」と、宿のオーナーならば誰しもが思っているに決まっているじゃないですか。それぞれが、「私だったらこんな宿に泊まりたい!」という理想のホステル像を持ち、それを目指してがんばっているに決まっているじゃないですか。

スタッフがフレンドリーでヘルプフル、そして熱意がある。それは当然のことだから、それを売りにしたって差別化にはならず、利益には全く繋がらないですよ、ということです。




以上!!


・・・というわけで、これらをまとめると、人気の宿というのは

最寄り駅から5分以内の好立地で、
価格を日によってコロコロ変えるようなこともなく、
ベッドルームのスペースに余裕がありベッドが広くて快適。
ちゃんとマーケット分析をしていて、
どんなゲストでも心地よく過ごせる柔軟性がある。

そんな宿だということです。



ウチはこれを全て揃えている!なんていう話では、もちろんないです(笑)。


綿密な分析をせず、熱意だけを武器にする方々は、“宿を経営してもOK!”な賃貸物件がめったに見つからないせいもあり、完全に不利な立地や条件でも、ついつい勢いで契約してしまいます。オペレーションの設計が厳しくても、ベッドを詰め込みまくったり、価格を高くしたり、高い稼働率を予想してみたりで、“どうにかビジネスが成立するように”、自分にとって都合の良いだけの、現実的でない数字をムリヤリ並べます。そして、それを補う理論武装が、「私には誰にも負けない熱意があるから、きっとうまく行く!」。

そんなんでうまく行くのなら、この業界、誰も苦しんでなんかいませんよ!



今回は、人気宿のオーナーの皆さんに対する、リスペクトの意も込めて書きました。YAWP! backpackersも、いつかは皆さんのような、人気宿の仲間入りをしたいものです。


柴又の花火大会!!




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