2017年5月24日水曜日

前回の記事の訂正と、改めて訴えたいこと。



前回の記事の閲覧数が、すさまじいことになっています! 誰か影響力のある方がfacebookにリンクを繋げたとか、twitterで話題にあげたとか、何かしらあったんじゃないかなぁ。そうでないなら、機械の故障としか考えられないです(笑)。


まぁ、僕なりに意を決したというか、このタイミングでエゲツない情報を世間にブチ込むことによる「いい加減に、この業界の現状を知って欲しい!」の情念が強くありましたので、閲覧数が増えまくったというのは、もちろん嬉しいことです。



しかし、それを読んだ僕の友人から、「クルーズ船の訪日観光客数が本当は60万人だ、というのは、さすがに低く見積もりすぎじゃない?」との指摘を受けました。また、記事のコメント欄には有志の方から、“1回のクルーズで複数の港に寄港するクルーズ船の外国人旅客についても、(各港で重複して計上するのではなく)1人の入国として計上している”との記載のある資料を、提示していただきました。



そこで改めて再検証をと、2016年の外国クルーズ船の日本国内寄港の詳細データを探しに探しまくったのですが、これがどうしても見つかりません。2015年の中国発の船のデータは見つかったので、2015年と2016年は船の数以外(コース等)はそんなには変わらない、という前提で話をすすめます。


2015年、中国発のクルーズはおよそ60%が博多港に寄港しました。そして博多港の2015年の外国船寄港回数は全部で245回。その内の9割以上は中国発とのことなので、中国船は約225回。そこから計算すると、2015年の中国発の日本寄港のクルーズ船は、全部で375隻程度だったと考えられます。長崎の30%115回でも≒380と、同じような数字になるので、この数字はほぼ、間違いないはずです。

そして、これら中国発の375隻のほとんどが、乗客定員2000〜3000名の、超巨大クルーズだとのことです(これには驚きました)。もちろん常に満員とは限らないので、乗客実数の平均を2000人としても、×375で75万人・・・。2015年の、中国人観光客のみのカウントで75万人なわけで、前回に僕が書いた「全部で60万人」は、この時点で完全に雲行きが怪しくなって来ました(焦)!!


さらに、改めていろいろな記事を読みまくったところ、博多港の2016年のデータについてを報じる記事(毎日新聞 2017年1月17日)に、

クルーズ船がほとんどを占める不定期の外国航路の乗降者数(概況値)は約169万3000人と昨年より54万4000人(約48%)多かった。

との記載がありました。


んん!? 博多港だけで、一年に外国人観光客が169万人!!?

・・・と、読んだ直後は驚きましたが、よく読むとこれは、「外国航路」とはあるものの「外国人」とは書いておらず(つまりは、日本発で海外に行く船も含む)、「乗客数」ではなく「乗“降”者数」。さらには「乗降“客”数」でもなく「乗降“者”数」なので、乗務員も含んでいるわけですね。クルーズ船がほとんどを占める、というのもビミョウな言い回しで(クルーズ船以外も含んでいるということ)、しかもわざわざ「概況値」とまで。言葉のマジックですね〜。


分かりにくいので、計算に使う数字を2015年のものに統一します。乗降者数は169万(2016年)−54万=115万(2015年)ですが、乗客ではなく乗“降”客なので115万人は半分にして、58万人。2015年に博多港発着の、“海外に向かう or 海外から来た”船に乗った人(乗務員・日本人客・外国人客)すべてをひっくるめて、58万人ということです。


そこをさらに掘り下げるために、では、クルーズ船に乗っている人間の【乗客】:【乗務員】の割合ってどんなもんなんだろう?と思い、調べたところ、こちらはけっこうたくさん見つかりまして。世界最大の客船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」の乗客数は6300人、乗務員は2000人超(スゴッ!)。 他にも、乗客4300人の船に乗務員1300人、800人の船に470人・・・

えぇ〜っ、クルーズ船って乗務員の数の割合、こんなに高いの? 乗客の半分〜三分の一くらいの数の乗務員が、乗っている!?


ということは、2015年に博多港利用の海外航路58万人(乗務員・日本人客・外国人客、全てを含む)の内訳は、乗客が約45万人で、乗務員が13万人といったところでしょうか。 日本人客の数は微々たるもんでしょうから忘れるとして、2015年に博多港を利用した外国人観光客は45万人。この内、中国人は9割以上なので、42万。一方で2015年の中国発クルーズの乗客は、前述のように全部で75万人。博多に寄る中国船は60%なので、75万×0.6≒45万。42万人とほぼ同じになった。


・・・というわけで、博多港の発表データを元に検算し、2015年の中国発クルーズ船による訪日観光客数は75万人ほどであると、僕の中でも確定いたしました。


そう考えると、2015年の全体数112万人というのも、中国人だけで75万人なのですから、正しい数字なのではと思い直しました。なので僕は、政府発表のクルーズ船による訪日観光客数の公表は、間違えていないとの見解に、ここで訂正いたします。「フェイク!」とか言ってしまって、政府さん、ごめんなさいです! 読者の皆さん、お騒がせして申しわけありませんでした!!



というわけで、なんだかカッコ悪いので、クルーズ船の誤解の件は、これで許してくださいです!!



・・・しかし、だとすると、宿業界としてはますます厳しいですね。僕はこれまでは「クルーズ船観光客の199万人は、本当は三分の一くらいだ」と捉えていたのが、丸ごとだったわけですからね。つまりは、宿業界にとってはお客さんになり得ない相手が、僕のイメージよりも3倍も多かったことになります。


なので、前回も「政府がインチキしている!」「数字は信じないで!」という、変化球な論点ではなく、「クルーズ船に泊まる観光客が多過ぎて、今や宿業界は完全に疲弊しているのに、それが世間には伝わっていない」というストレートな方向に、訴えればよかったですね。これは、素直に反省します。



政府発表の訪日観光客数

2010年   860万
2011年   620万
2012年   840万
2013年  1040万
2014年  1340万
2015年  1970万
2016年  2400万

を、僕らホステル業界の顧客候補の数で表すと、

2010年        860万
2011年        620万
2012年        840万
2013年       1040万
2014年  1340万→1100万(乗員200万クルーズ 40万)
2015年  1970万→1570万(乗員290万クルーズ110万)
2016年  2400万1840万(乗員360万クルーズ200万)


となります。乗務員の中には、日本国内の宿に泊まるという方はいるでしょうが、ホテルではなくホステルやゲストハウスに泊まる方はほぼ皆無(笑)でしょうから、この通りとします。


そしてここから、

「政府は観光客数は2400万人と発表しているけど、この業界的には1840万人しかいない」

「2014年から2016年の間に、ホステルの顧客候補(需要)は1.7倍に増えた。しかし一方で、ベッド数(供給)は5倍に増えた!」

・・・と訴えた方が、今のこの業界の厳しさを皆さんに伝える上では、シンプルでより効果的だったかもしれませんね。



とにかく僕は、「今、宿が不足している」といった、現実とは大きくかけ離れた情報、その先入観をいまだに持つ方々に、一人でも多く、一刻でも早く眼を覚まして欲しい。「ならば儲かるはずだ!」と思い込み、無策で無謀に宿業に参入する方々を、できるだけ多く止めたい、と、そのように考えております。


宿業界の今のこの現状と、全く明るいとは言えない未来展望を充分に理解されており、それでも儲けを生むスキームをお持ちの方、スキルのある方、よっぽどの環境的なアドバンテージのある方(僕はこれですね)は、僕の訴えは気にせず、どんどん飛び込んで来てくださいです!!




2 件のコメント:

  1. 大変読み応えありました!
    実際の数字に当たって話されているので説得力があります。
    もちろんその分、間違いも数字で表れてくるわけですが
    それも含めてしっかり検証されてるので参考になりました。

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  2. ありがとうございます!
    前回は、不確実な情報を事実のように勢い任せで書いてしまいましたが、今後はできるだけ正確になるよう、より多くの情報収集と精査をした上で、発信しようと思います。

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